ハカセと美織の続いていく旅

10/16
前へ
/16ページ
次へ
「なんだ?」 「これは私のただの願望なんだけど、私って、ハカセが作り出した研究成果だったりして?」  それを聞いてハカセは心底、何を言っているのかわからないという顔をした。 「そんなわけないだろ。もしも美織のような存在を僕が作り出せるとしたら、僕の研究はとっくに終焉を迎えている」 「やっぱ、そうだよね」 美織は目を伏せて微笑んだ。 「なぜそう思ったんだ?」 「ハカセだったら、私が寝てる間に記憶を改竄(かいざん)したり色々できるかなって思って。もう長く生きすぎていて、自分の存在が信じられないんだ。このまま生きている意味が見つからないなら、せめてハカセの研究に貢献したいなって思って。もしも私がハカセのレプリカな存在なら、私に生きる意味はある」 「残念ながら、と言うべきかどうかはわからないけど、君は紛れもなくオリジナルな存在だ。誓って、僕が君に手を加えた事実はない。ゼノに聞いてみたらいい。彼は真実しか口にしないからな」 「いいの、ごめん、変なこと言って」  美織は少しだけ笑って見せたが、その心は絶望に打ちひしがれた。唯一の希望が絶たれたような気がした。 「美織、外に目を向けてみろ。全ての生き物は限りある命を生きている。そこに短長があろうと、君が生きる意味を探すための参考にならないと言うわけではない」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加