ハカセと美織の続いていく旅

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 美織は考えてみたけれど、結局いつもの散歩コースを巡ることにした。  ワンピースの裾が風になびく。  大丈夫、ハカセが言うような何かが見つからないとしても、私は大丈夫、たぶん。  一度は絶望した心を懸命に奮い立たせる。  美織は表通りをゆっくりと歩いた。  車通りの多い、海へと続く道をしばらく歩き、狭い小道に折れる。民家が途切れ、緑が多く残された雑木林へ分け入った。  雑木林と言っても、整備された公園のような小綺麗さで、しかし人影は少なく美織はよくこの場所を訪れていた。  誰かと話したいなら、時折買い物に出向く雑貨屋さん、海沿いの公園、静かな博物館。  候補はいくつかあったけれど、まだ立ち直れない心を癒やすにはこの場所がいい。風に揺れる木々のささやきは、きっと私を慰めてくれる。  草を踏みながら歩いていると、近くで何かがか細く鳴く声が聞こえてきた。かすかに聞こえるその声は、猫の鳴き声のようだった。  美織はその鳴き声のする方へ向かい、茂った長い草をかき分けた。すると草むらに、真っ白な猫が体を伸ばして横たわっていた。そのすぐ横には、まだ小さな子猫が3匹。親猫と子猫2匹は全く動く気配はなかったが、1匹だけ、震えながら前足を親猫の腹に乗せ、小さく鳴き声をあげていた。
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