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外見こそロボットらしく機械じみているが、ゼノには人間に似た心がある。それはゼノを作ったハカセのこだわりなんだそうだ。
厳しい言葉を投げられることも多々あるけれど、ゼノは決して嘘は言わない。そこには真実だけがある。その融通の利かなさが機械らしくて美織は好きだし、心の底から頼りにしている。
たったひと月ゼノの小言を聞かなかっただけで、こんなに懐かしく思ってしまうなんて。
美織はもう一度口元を緩めた。
そろそろ来るころかな。
美織がそう予感すると同時に、忙しなくドアがノックされた。返事をする前に勢いよくドアが開けられ、小さな男の子が走り込んでくる。
「ようやく目が覚めたんだね!僕の大切なドッペルゲンガーくん!」
男の子は、ベッドに座ったままの美織に容赦なく抱きつく。まるでご主人の帰宅を待ちわびた子犬のようだ。ふわりとしたくせ毛が頬をくすぐり、美織はたまらず彼を引き剥がした。
「ハカセ、大げさだよ。たった1ヶ月寝ていたくらいで」
美織に肩を押さえつけられても、なおもハカセは手を伸ばしてくる。
「寝ている君を見ていて愛しさが増したよ。僕らはこの世でふたりだけの同胞なのだから、頼むからもう僕をひとりにはしないでくれ」
「ハカセにはゼノがいるじゃない」
美織がそう言うと、ハカセは伸ばした手を美織の首の後ろに回した。
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