1人が本棚に入れています
本棚に追加
「確かにゼノだって僕にとっては大切な存在だ。だけどこの1ヶ月、ゼノは君につきっきりだったからね」
「わかった。あらためてお礼を言っとく」
美織はハカセの腕を優しく振りほどく。するとハカセは美織にじゃれつくのを諦めてベッドから飛び降り、枕元の機材をいじり始めた。機材に取り付けられたモニターを見ながら言う。
「美織、もっと深刻にとらえてくれよ。ゼノは君の再生のために1ヶ月もコンピューターに同期し続けたんだ。機械としての彼の寿命も大きく削られた。まぁ、代わりに僕は自分で味噌汁くらいは作れるようになったけどね」
ハカセがキーボードで文字を打ち込む。画面にグラフのようなものが映し出された。
「ねぇハカセ、これは提案なんだけど、ゼノと同じロボットをハカセがもう一台作るってのはどうかな?私の再生にはどうしてもゼノが必要だし、その間、ハカセに不便をかけてしまうのは心苦しいから」
以前はゼノを介さなくても自己再生できた。それも早ければ数十分で。しかし肉体の仮死を重ねるたび、再生にかかるスピードはどんどん落ちていった。それを補助するためにゼノはいる。
「簡単に言ってくれるな。それについては、僕はゼノの意思を尊重したい。自分の仕事を新参者に横取りされるのは彼だって面白くないだろう。それに、君さえ無茶しなければゼノひとりで十分なんだ」
最初のコメントを投稿しよう!