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ゆっくりと、美織は目を開けた。
最初に見えたのは真っ白な天井。記憶の混濁が引いたのち、細く開けられた窓から入り込む涼しい風を頬に感じた。
右手を持ち上げ、手の甲を見つめる。青みを帯びた血管が透けた、まるで生気の感じられない白い手。今にも光に溶けてしまいそうだ。その指の隙間に、ふと影が差した。
「勘違いをされては困りますね」
影がゆらりと動き、目の端にメタリックな人工物が映り込む。
「身体構造上あなたは確かに不死身だが、その再生をお手伝いするこちらのことも少しは考えてもらいたい」
耳慣れた説教に、思わずその場に似つかわしくない笑みがこぼれそうになる。
「ゼノ、おはよう」
美織の挨拶に少しも応じず、ゼノは機械音を立てながら説教を続ける。
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