Garnet Rose

2-2

「うあああああああああああ―――――！」

　涙がはらはらと溢れ、絞り出した声が機内に反響した。
　俺はもう死ぬんだ。死ぬんだ。死ぬんだ。死ぬんだ――――――……
　その時。

「泣かないで。大丈夫よ。しっかりして！」
「……っ？」

　涙で滲んだ視界の中に、小学校高学年程の少女の姿が現れた。
　細く柔らかな長い黒髪は熱で頭半分縮れ、左目が大きく爛れて腫れ上がっている。ワンピースの胸に付いている銀の薔薇型のブローチが歪に変形している所から、きっと爆発の時半身に爆風を受け、舞い上がったブローチが左瞼にくっ付いたのだろうと思った。後方からはこの人垣で来れるはずがないから、少女は燃え盛る前方、もしくは近辺の席からやって来たのだ。

　少女は窓に残ったアクリル板の尖った部分を、辺りに散らばっていた乗客の持ち物、スマホやハンドバッグなどで叩き落とし、息絶えている人が膝の上に乗せていたブランケットを引き抜くと窓枠の下部を包むように被せた。そして俺の足を掴んでいる人々の指を「ごめんなさい」と言いながら一本ずつ外し、俺の身体を引き上げた。