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あちこちに火傷を負った少女は荒い息で、通常であればとても人の世話を出来るような状態ではなかった。けれど小さかった俺は涙目で、もうどうしたらよいかも分からずに畏縮しまくっていて、少女の厚意に甘えるしかなかった。
助けてくれる自分以外の人物が現れたことで、それまで張り詰めていた糸が切れてしまっていたのだ。
「行くわよ」
少女は俺を慎重に抱き上げると、ガラスになるべく引っ掛からないよう気を付けながら窓の外へと滑らせた。少女の手から離れた俺は、数メートル下の草木の間に落下し、枝で幾つかの掠り傷は負ったが、そのおかげで落下速度が緩み、骨を折ることもなく樹下の地面へと足を着けた。
ボウン、と再び爆発音が鳴り、機体が大きく揺れた。
「お、お姉ちゃん……!」
俺は少女がなかなか降りて来ないことに焦った。他の乗客に足を捕られているのかもしれない。俺を逃がした代わりにあの子が、逃げられなくなったのかもしれない。
「お姉ちゃん!早くっ!」
ギ、ギギッ……と、山に垂直に刺さり半分折れた機体は、時間が経つにつれその重量で浮かび上がった半身を沈めようと動き出していく。今出なければもう、あそこからは出られない。
「お姉ちゃん!お姉ちゃん!お姉ちゃん!」
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