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 声が枯れる程に連呼した。  すると窓辺のブランケットが内側に引き込まれ、あっと思った時、少女がそれを身体に巻きつけるようにして頭からダイブしてきた。少女の身体はバキバキと激しく枝を折りながら高速で落下し、幾つかの小枝を道連れにして、俺のすぐ傍の地面に叩きつけられた。    少女はすでに虫の息だった。縮れた髪の分け目から見える左瞼は先程よりもぷっくりと腫れて膨らみ、衰弱する彼女とは裏腹に、本物の薔薇の花のように紅く生き生きとしている。  一瞬、こんな状態なのに、前に母の宝石箱の中で見たガーネットの美しい輝きを思い出した。  冷やさなければ、と思ったが何も手は無く、俺はただ必死で彼女の身体を揺さぶり、意識が途絶えないように叫び続けた。泣きわめく俺に応えるように、彼女は微かに手に力を入れて俺の袖を撫で、苦しいながらも柔らかく口角を上げてくれた。    ズッザザザザザザ………………ドオオオオオオオオオン………!  傾いた機体が斜面を滑り落ち、谷底にぶつかって炎上した。揺らめくオレンジの炎が、下方の木々の枝葉の間からちらちらと見え、その黒煙は数十メートルはあるであろう俺らの所まで上がってきた。  鉄や合金やらの金属と繊維と、人間の燃える匂いが俺らを包んだ。
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