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 永久とも感じ取れるような長い長い数分の後、ヤツはふやけた白線を青の中に残して東の空へと消えて行った。その線を見るのも苛立つ。 「おーい、花生(はなお)ぉっ!」 「…………あぁ」 「大丈夫か。今、行ったろ。飛行機」 「…………」 「もう平気か?なら、もうすぐ昼休み終わるし、一緒に教室戻ろう」  声をかけて来たのは桜木充(さくらぎみつる)。同じ高校三年のクラスメイトだ。  生徒会長もしている充は責任感が強く真面目で、問題ある生徒の監視も、まるで先生から任されているかのように普通に行っている。  クラス一の問題児は間違いなく俺で、そのためかこいつは、学校にいる間は四六時中、俺の見張り番のようにくっ付いている。小学校からの腐れ縁でもあるが、俺はこいつを友達と認識して行動したことは無い。  俺はグラウンド脇の金網を越えた所にある防火水槽の鉄蓋の上に寝転んでいた。僅かに開いた蓋の隙間から濁った緑色の水が見え、近づけばくぐもった腐敗臭が鼻を突いてくる。 「そこは立ち入り禁止だって、前にも言ったよな」 「…………」  身体を起こして溜め息を吐き、俺は金網の向こうで偉そうに眉を寄せる充に忌々しげにガンを飛ばした。 「お前もう来んなって、前にも言ったよな」
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