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 何が起こったのかすぐには察知出来なかったが、隣にいたはずの父母が押し潰され、周りが凄惨な状況になっているのを目の当たりにして、全く想像もしていなかったあり得ない事態が発生したこと、そして自分がとてつもない窮地にあることを本能が理解した。    飛行機が、着陸に失敗したのだ。    どこかの山間に突き刺すように墜落したらしい機体は「く」の字に曲がり、前方は燃えて潰れ、後方は斜面に対しほぼ直角にその体勢を保っていた。やや右側からぶつかった機体は特に右前方を中心にぐしゃぐしゃに大破しており、その方角に座していた人々は一瞬でその圧に飲みこまれた。    父と母もその内の二人だった。間一髪の所で俺は難を逃れた。けれど、難は去っていたわけではなかった。    ひし曲がって折れた機体は斜めに刺さっており、見えるところに出口らしいものは無く、前方の火の手は悪魔の腕が手招きするかのように揺れてこちらに向かってきていた。黒煙はあっという間に機内に広がり、分を刻むごとに喉を締め付けていく。    同様に生き残った人々、後方に座していた数十人は出口をと急ぐあまりドミノ倒しになって反って唯一の通路を塞いでしまった。    瞬く間に機内は高温になった。  
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