いちれつ、いちれつ。

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『未成年者の方は、必ず保護者の人と相談して購入することにしましょう!  このアイテムは、自分のお金で購入するものです』 「うっせーつーの。あたしの携帯だからあたしの金ってことでいいじゃん!」  勉強しろ勉強しろと、最近あたしに説教をしてくることが増えた母親。正直うざいと思っていたのだ。共働きでそれなりに稼いでいるくせに、何であたしのちょっとしたゲーム代も払いたがらないのか、それも不満だ。これも大事なストレス発散手段だというのに。 「ふん、どうせ金余ってんだからいいよねー?」  後で叱られたら面倒だが、今はそれよりも両親にぎゃふんと言わせてやりたい気持ちが勝っていた。同時に、このイライラするパズルを課金アイテムを使ってすっきりとクリアしてみたい。  あたしはアイテムをポチった。最初はパフェ三個、ケーキ三個だけの購入である。  これで忌々しい焦げ焦げフルーツを消してやれる。あたしは息まいて、ゲームを再開したのだった。 「おおおお、すごい、ランキング入りじゃん!」  それからどれくらいの時間、プレイし続けていただろう。気づけばスコアがすごいことになっている。課金アイテムをじゃぶじゃぶと使った結果、気持ちよいくらいスムーズにプレイできるようになったのだ。  このままランキング全国一位まで行っちゃおうかな、とあたしは夢中になった。アイテムを使うまでは10まで行くのが精々だったステージは、いつの間にか100を超えている。 「ただいまあ。……ちょっとカーヤ!あんた、なんで風呂も沸かしてないのよ!掃除は?洗濯は?」 「うげ」  母が帰ってきて、ようやくあたしは時間を忘れていたことに気が付いたのだった。無論、母には家事をまともにやっていなかったことを咎められることにはなったが。  どれくらいアイテムを購入したのかは覚えていなかった。むしろ、後で気づいて怖くなったというのが正しい。しかし。  不思議なことに。その月のスマホの請求額は、普段と変わらない額でしかなかったのである。 ――課金アイテムつってたけど実は無料だったってこと?でも、確かにパスワードっぽいの入れたんだけどなあ。  ランキングも上位三位くらいまで行ったし、なんだか中毒性が怖くなってあたしはそれ以降フルーツでGOをやるのをやめたのだった。  そして、時の流れと一緒にそんなゲームをやったことも忘れていたのである。 「あ、あれ……?」  思い出したのはあたしが社会人になり、一人暮らしをするようになってから。  会社から振り込まれた給料が、どこかに消滅していくことに気が付いてからである。 『未成年者の方は、必ず保護者の人と相談して購入することにしましょう!  このアイテムは、自分のお金で購入するものです』  あたしが借金取りに追われるようになるまで、あと。
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