地球最後の日

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「……消滅しちゃったね、地球」 「そうだな、あっけないもんだ」  彼はモニターを操作して、地球と隕石が消え暗い宇宙を映すだけになった画面をオフにした。 「小さなガスの塊からずっと育ててきたのに、残念だったね」  言いながら横を見れば、彼の目は赤く潤んでいた。クールな態度でいてもその実、情の深い彼のことだ。自分が育てた星を始末するのは、つらかったに違いない。 「おれは……どこで間違えたんだろう」 「できるだけのことはしたよ、仕方ない。あんなに汚染が進んじゃ、もう打てる手もなかったんだから」 「美しい星だったんだ、本当に」 「うん、知ってるよ。いろんな景色や動物を見せてくれたよね。私、ずっと忘れないよ」 「ありがとう」  傷ついた顔で微笑む彼を抱き寄せ、私は恋人にそっと口づけをした。 「一緒に新しい星を作ろうよ。地球によく似た、きれいな星を」 「そうだな、また一からやり直しだ。今度は二足歩行する生きものが生まれたら、早めに駆除するよ」 「二匹いたらすぐ三十匹に増えちゃうからね、私も気をつける」  さよなら地球、彼が愛した美しい星。  私はその姿を眼裏(まなうら)に焼き付け、お茶を入れるために立ちあがった。 【了】
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