地球最後の日

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「あと三分で隕石衝突だよ」  恋人に呼ばれ、私は彼の隣に座った。  テーブル上のモニターには、光の尾を引いて青い惑星に近づいていく隕石の画像が映し出されている。画面左端では忙しなく動く数字が、地球の余命をカウントダウンしていた。 「いよいよだね」  そう呟いた私の肩を抱き寄せ、恋人は細く長く、息を吐いた。 「一緒に見届けよう、最後の瞬間を」 「やり残したことはない?」 「ありすぎるが、もう遅い」 「……そうかもね」  こんなことになるなら、私にだって今日までにできることが、もっとあったかもしれない。  地球は絶景の宝庫だった。山頂を染める朝焼け、凪いだ海を渡るトビウオの群れ、一面の菜の花。  私と彼が見られたのは、地球が持つ多彩な美しさの、ほんの一部でしかない。  カウントダウンが三十秒を切る。隕石は軌道をずらすことなく、まっすぐ地球に向かっていく。  見届けよう、この惑星(ほし)の最後を。  膝の上で丸めた私の手を、彼の手が包んだ。  三、二、一……  目の前が真っ白い光に包まれ、その眩しさに、私は思わず目を閉じた。
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