自己啓発セミナーのジュン

裾に刺繍の入ったラッパズボンにベルスリーブの麻のシャツを着た、ロン毛のみうらじゅんの兄弟のような男(若しくはサングラスを外した本人かもしれない)が、教壇で弁を振るっている。

「先週は、『タイタレッツテレトスを乾坤(けんこん)に見たて、タイトレーツテレトスに辿り着く直前に、テレトスの部分だけを右3回転半させると稀有な状態、つまりタイタックルータテレシスに変化する』という話までしたはずなんだな。そうだよね？マギー」

「Yes, that’s right, Jun 」
マギーは丸いサングラスとピースマークの大きなネックレスをかけている。真ん中分けの長い髪に羽根のついた紐を巻き、フォークギターをポロリと弾いた。やっぱり名前はジュンなんだ。

「なので今日は、タイタックルータテレシスに仮に変化した後、サモンシールドを200テッセルバクシム加えてみたら、さあどうなるかって事を話し合おうと思う」

今って令和？みんな吉祥寺の南口、井の頭公園入り口に居そうな格好してるけど。というかそもそもこの話みんな着いていってる？

「はい」
ジョンのレノンみたいな無造作ヘア男子が手を上げた。

「どうぞ」
ジュンが促す。

「サモンシールド200バクシムで充分ドゥルンガへの解毒作用があるので、タイタックルータテレシスが好胤(こういん)の為に、テレシスソルトナックを生み出すんじゃないかと考えます」

「なるほどね〜！マギー、ちょっと弾いてみて」

マギーはギターをポロロンと弾く。

「そうそう、AmからD7への転調みたいな感じだね！」
ジュンはご機嫌だ。

「はい」
濡羽色のパッツン前髪のアングラ系女子が手を上げた。

「どうぞ」

「ドゥルンガへの解毒作用にはマッカスを100バクシム程加えたサモンマッカスシールドの方が、毒を持って毒を制すという部分ではマラピクエフェクトが
緩衝されるであろう点と合わせても安全且つ、テレシスソルトナックが結局薫陶(くんとう)する結果をもたらすんじゃないかと思います」

「そう、君、なかなか慧眼(けいがん)をお持ちだねえ。マラピクエフェクトが起きちゃうとテレシスソルトナックに辿り着けなくなっちゃうからね。テレシスがケイノエアロとケイノルピノを階(きざはし)としてなんらかの崇高なソルトナック状態に導くっていうのが目的だから。マラピクは避けないと」
(みうらかもしれない)ジュンは、口に蓄えた髭をモジャモジャ触って頷いた。

「はい」
目の下に花のタトゥー(シール？)が入った、かぎ編みベストを着た女が手を上げた。

「どうぞ」

「でもマラピクを通過することによって、酸鼻(さんび)であるケオティックマラピクに対する抗体になり得るセメントサール・カッパシールドを強化、しかのみならず、本当の意味でテレシスソルトナックを帰趨(きすう)とするには、結局のところシーターメセポラン波長を涵養(かんよう)する必要もある…と昨夜考えました」

「じゃあ、君はマラピクへの抵触(ていしょく)は避けられないと？」
ジュンはニヤリと含んだ笑みを見せた。

「私も同感です。避けるより通過することによりテレシスはソルトナックに瀰漫(びまん)し、体内宇宙から体外宇宙そしてオゾンを超えて拡大エネルギーとして全体を包むテレシスソルトエヴァーシヴァルナックに辿り着く可能性があります」
タイトな柄シャツのお兄さんが言った。

「みんな、すごいぞ！まさかソルトエヴァー論にまで辿り着くとは！！実践例はあるかな？」

「先日銀行で後ろにソワソワ急いでいる婦人がいたので、テレシスにサモンシールドを50加えて先に行かせたら礼を言われました」

「イイねえ〜」

「昨日入った学校のトイレが汚れていたので、ケイロエアロを超えて綺麗にしたらマラピク作動前にケイノルピノも経由して結局全てのトイレをついでに掃除しました」

「イイねえ～」

「妻が私の大切なTシャツをブリーチで真鱈(まだら)模様にしたのをみて、マラピクエフェクトが起きそうになった時にセメントサール・カッパシールドが強化された結果、そのシャツで妻と一緒に藍染めタイダイを楽しむことにしたら『これがもしや、テレシスソルトエヴァー？』と感じる瞬間を得ました」

「素晴らしいねえ〜。よし、マギー！今の感じ、歌にしちゃって！」

「Oh〜タイタレッツテレトス～is such a great time with all the way to タイタックルータ〜テレシス～wowwow Yes! You are my ソルトエヴァ〜エヴァ〜never never be my ドゥルンガ〜It’s okay to feel マラピクonce in a while like a blue moon coming〜. One day you gonna reach テレシスソルトエヴァーシヴァルナ〜ック♪」
マギーの渺茫(びょうぼう)な歌声に、会場が包まれた。

「ブラボー！ブラボー！！」
ジュンはじめ、皆が拍手喝采する。

「では、最後にまとめ！結局のところ、タイタックルータテレシスがテレシスソルトナックを経て、ソルトエヴァーシヴァルナックに帰趨する為に必要な全ての源は？みんな〜、せ〜の！！」