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キトエは困ったように上を見てから、荷物を持っていないほうの手で、リコの手を取った。手を引かれる。つながれる。キトエの手の感触に、遅れて頬に熱が集まってきた。
(手、つないで大丈夫なのかな)
街中で男女が手をつないでいて目立ったりしないのだろうか。あたりを見回してみたが、皆、日没の閉店間際の駆けこみや客引きに忙しいようで、注目されている様子はなかった。
リコもキトエも、この国では珍しい薄桃色と薄水色の髪を隠すために、つた模様の入った青い布を頭に巻いていたが、国境に近付いているからか同じ髪色の人と当たり前のようにすれ違う。自分の見えていた世界だけでは分からないことがある、とリコは実感する。
食器、宝飾品、野菜や果物。両脇の屋台に目を奪われながら、乾いた土の道をキトエと手をつないで歩いている。キトエのほうからリコに触れてくれることが、少し恥ずかしくて、とても嬉しかった。恋人になる前のキトエは、儀礼以外で触れてくることはなかった。
リコはこの小さな国で十五歳で生贄に選ばれた。ずっと仕えてくれていた十九歳のキトエと生贄の儀式を行う城に入り、ともに逃げ出した。
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