目が覚めなかったら?

3/3
前へ
/68ページ
次へ
 もう一度つながりをもって、リコは魔力が尽きるまでキトエに浄化の魔法をかけた。  まだ、泣くのは早い。  目が覚めて、リコは眠っていたことに気付いた。即座に意識がはっきりする。まだ空は深く暗く、真ん中から半分に割れた月の明るさが星々の光を上回っている。  かたわらにはキトエが寄りそうように岩肌を背にして、目を閉じている。息は、している。違う、呪法の眠りに落ちてしまっていたとしても、息が止まることはないのだと、と心の中で思う。  二回目のあと、服は着たものの互いに眠ってしまったのだろう。夜明けの気配はないから、眠っていたのは少しの時間のはずだ。  指先が、冷たい。今すぐ揺り起こしたいのに。 (目が覚めなかったら?)  怖くて、できない。  リコに寄りかかるように眠るキトエの顔を見つめる。髪と同じ薄水色のまつげが、呼吸に合わせてかすかに動いている。 「キトエ」  か細い声で、呼べた。キトエは目をあけない。肩に、触れた。力の入らない指で、軽く叩く。肩を、揺らす。 「キトエ。キトエ、ねえ」  肩を強く揺すった。 「お願い。起きて」
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加