月の光を口に含む

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月の光を口に含む

 薄水色のまつげから、橙色と黄色の小さな光がこぼれる。黄緑の瞳に橙と黄と緑が差しこんでいく。  割れた月の明かりしかないのに、どうしてこんなに虹の色が見えるのだろう。  色の欠片がにじんで輝きを増す。まばたきで、いっぱいになった涙がリコの頬を伝い落ちた。キトエが慌てたように目をひらく。何か呟きかけて、「ああ」と吐息のような声をもらした。 「目が、覚めたのか」  リコは頷いた。  昏睡の呪法に勝った。一緒に逃げられる。キトエを失わずにすむ。言葉にならなくて、あふれてくる涙のままにしゃくり上げた。抱きしめられて、背中を撫でられる。うそではないと確かめたくて、キトエの胸にすがりついた。ちゃんと、目覚めている。動いている。 「ありがとう」 『わたしの力じゃない』と言いたくて、涙でつまって言えなかった。『魔女』の忌まわしい力。けれど、呪法を破った力。キトエと一緒にいられるための力。  キトエは落ち着かせるように背を撫でてくれていた。そうして、想いが強くなる。 「やっぱり、死にたく、ない」  キトエの胸から顔を上げると、張りつめた表情で見つめられる。涙を拭って、息を整える。
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