月の光を口に含む

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 なぜならこれは、結婚の儀式だからだ。 「リコの背負うものを俺も背負う。天に入れなくても、地の底まで一緒に行こう。ふたりで神にそむくなら、割れた月で一緒になるのがちょうどいい」  キトエは、穏やかだった。  キトエを同じ罪へ引きずりこんでしまう。けれど、もうとっくに始まってしまっていたのだ。生贄の城を一緒に逃げ出したときから、決まっていたのだ。 「いいの? 本当に?」 「いいも何も、俺はずっとリコの騎士だ。絶対に離さない」  ふと、キトエの表情に薄く不安がかぶさる。 「俺だと嫌か?」  こみ上げてきた涙が、頬を流れていってむずがゆくて、乱暴に拭った。満月が真ん中でふたつに割れた月を仰いで、月の光を口に含んで、キトエと唇を合わせた。 「光と虹を」  しゃくり上げそうになる声で、返した。 『太陽の光と空の虹をあなたにあげる』  結婚の儀式で返す言葉だ。  これで結婚は成立した。立会人もいない、誰にも祝福されないけれど。 「嫌なわけないでしょう、ばかっ……キトエが、ずっと騎士だっていうなら、わたしはずっとキトエの主だから。だから、だからっ、ずっと、一緒にいて」
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