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三月は去ってしまう
正月明けのドタバタを乗り越え、どうにも短すぎる二月を終え、気づけば春兆す三月。毎年この時期になると、冬休み明けの朝礼で決まって校長先生が披露していた小話を、佐々木光希は思い出す。
「『一月は行く、二月は逃げる、三月は去る』という言葉がありますが、この時期は本当にあっという間に通り過ぎてしまいます。学年最後の今学期、十分に気を引き締めて過ごしましょう」
小学生の当時はあまりピンと来ていなかったが、まさにその通りだと、二十四歳を迎えた光希は思う。しかも、一月が行って二月が逃げて、三月が走り去ってしまうまでの体感スピードは年々早くなっている気がする。特に今年は。
デスクトップのモニター脇に置かれた卓上カレンダーにちらりと目を向けたあと、モニターの向こう側、通路を挟んだ斜め前方の席に座る彼の背中に視線を移す。
風間係長の、最後の出勤日が迫っていた。三月が終わると共に彼は医事課から去ってしまう。来月にはもう、こうしてあの背中を眺めることもできない。
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