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「あ、ただいま」
「お、かえり」
楓に抱き付きたい気持ちだったが、彼の両手は大量の紙袋で塞がれていた。
「大和って嫌いな物ないんだよね?いっぱい食べると思って色々買ってきた。ステーキは俺が今から焼くね」
「……うん」
あいつ今日誕生日だっけ?
楓がステーキを焼いてくれるなんて羨まし過ぎるだろ。
「あと里津はエビが好きって言ってたからエビチリとエビマヨも買ってきた」
「!」
さすが楓。
「ローストビーフとシーザーサラダにお寿司にポテトも」
「わ、美味しそう」
デブまっしぐらだけど今日は食べるぞ。
料理が入った紙袋を受け取った。
「引っ越し作業はどう?順調?」
「うん。大体終わったよ」
細かい物は既に持ってきてたし、家電は勿体ないけど売れる物は売った。
「俺も手伝えれば良かったんだけど」
「いやいや、仕事優先で大丈夫」
「里津のそういう所、本当に助かる」
楓は空いた片方の腕で私を軽く抱き寄せ、頭にキスをした。
「……楓」
「そんな顔しないでよ。俺、」
「そんな顔するわよ。玄関でいつまでイチャイチャしてんのよ」
「「!」」
バッと後ろを振り向くといつの間にいたのかすみれと大和が立っていた。
「私の目が黒い内はピンクは禁止よ!」
「姉ちゃんキャラ変した?」
「す、すみません。キャラ変はしてない」
楓がスッと私の前に出る。
「すみれ、買って来たもの皿に出して」
「すぐに出すわ」
クッ、すみれは楓にも言いたい事は言うけど基本的に素直だ。
「大和君、久しぶりですね」
「……はい。お久しぶりです。俺の事は呼び捨てで良いですし敬語もいらないですよ」
二人の間にバチッとしたものが見える……が楓はふ、と笑って。
「じゃあ大和、ゆっくりしていきなよ」
「俺ももう敬語なんて使わないからな!」
いやお前は使え。
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