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◆◆◆◆
同棲を始めて早いもので十日程経った頃。
私は張り切ってクリスマスディナーの準備をしていた。楓には付き合って初めてのクリスマスだから外に食べに行く?とも提案されたけど二人でゆっくり過ごしたかった……のだが。
「そういえば、弟が明後日帰ってくる」
「弟?」
弟って和菓子屋さんで働いてる秋桜君、だよね。
その時、ちょうどオーブンで焼いていたチキンが焼き上がりさっと盛り付けをしてそのままテーブルに置いた。
「すごく美味しそう」
「だよね。初めて焼いたけど結構上手く出来たと思う……じゃなくて大丈夫なの?弟」
「大丈夫ではない」
「そ、そうなの?」
「俺もよく分からないけど、結婚したい女性が出来たから父に認めてもらいたいんだって」
「はい?」
けっこん?いや、そもそも結婚を認めてもらうっていつの時代の話?
「弟何歳だっけ?」
「今年で二十三」
「早くない?相手は?」
「同じ職場の歳上の女性。俺達と同い年」
「「……」」
何故かシーンと静まりかえる。
「大丈夫、なのかな?まあ七歳くらいはそこまで離れてもいないか?」
「歳の差は別にどうでもいいけど大丈夫なわけない。父も珍しく怒ってる」
「あの穏やかそうな会長が」
「父さんは厳しい人でもある」
家出同然の息子から家に帰るって連絡があったと思ったら今度は結婚だもんな、そりゃ怒られても仕方ない……けど。
「楓、味方になってあげるよね?」
「この状況でなれると思う?」
「うん」
「……里津」
「だって、四面楚歌みたいな状況にわざわざ飛び込んでくる程その女性の事は本気なんでしょ」
「そうかもしれないし俺も味方になりたい気持ちはある。でも、勝手に家を出て行った弟をすんなり許してすぐに結婚を認める事なんて出来ない」
なら、私が動くしかないか。
未来の弟をこのまま見捨てられない。
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