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楓はとても丁寧に包装紙を開けていく。
「キーケースだ。ちょうど新しい物が欲しかったから、ありがとう」
「どう致しまして」
その嬉しそうな笑顔を見れるだけでご飯三杯は食べれる。
切り分けてくれたケーキは一段目はチョコレートのスポンジで二段目は普通のスポンジになっていた。中はカスタードと生クリーム、ここにもイチゴがふんだんに使われている。
「これ、もしかしなくてもめちゃくちゃ豪華なやつだ……」
「トオノのクリスマスケーキよりも手は込んでるかもね」
「だって、一段目と二段目でスポンジが違うケーキ初めて見た……あれ。て事はもう一台作ったの?」
スポンジケーキって一個焼いてそれを半分にしてデコレーションだよね?
「鋭いな。もう一個作ってそれはすみれにあげた」
「すみれに?泣いて喜んだんじゃない?」
簡単に想像がつく。
「泣いてはないけど、喜んでくれた。すみれは昔から俺が作った物は多少失敗しても絶対美味しいって言って食べてくれるから」
子供の頃の私と大和みたいだな。
「あ、じゃあすみれが本当のお客様第一号みたいなものだね」
悔しいけれど二人の間には入れない。
寝言で名前呼ぶくらいだし。
「子供の頃の拙いケーキを換算すればね」
「?」
楓は何故か私の左手を取った。
「それに里津にはお客様じゃなくて、俺の奥さんになって欲しいから」
「!」
「遅くとも来年のクリスマスには薬指に指輪をプレゼントさせて欲しい」
ドキッとする位、真剣な表情だから目が離せない。こんなに幸せで良いのかな。
「返事は?」
「っ、はい」
今日は人生で忘れられないクリスマスになった。
「まあ、遠回しに心の準備しておけって事だからね」
「……はい」
本当にね。
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