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『兄から、明日部下が最寄駅に迎えに行くからあらかじめ連絡をしておけと言われまして……よろしくお願いします』
「……」
楓は本当に、本っ当にこういう所あるよね。
部下って説明したのは置いといて素直じゃない。
「こちらこそよろしくお願いします。最寄駅と到着する時間を教えて頂けますか?」
『はい、最寄駅は……』
通話を終えて先程とは真逆の気持ちでソファに沈み込む。何はともあれ良かった。
ホッとしているとタイミングよく玄関が開く音がして楓が帰って来た。足早に玄関へと向かう。
「おかえり」
「ただいま」
「私って、いつから楓の部下になったの?」
「……」
楓はバツが悪そうに私を見る。
「俺が出来る譲歩はここまでだから」
「っ、ありがとう」
私は楓に抱きついた。
「何で俺の弟の為にそこまでしたいのか意味が分からないけどね」
ぽんぽん、と頭を撫でてくれる。
「楓の弟だから助けたいと思うんだよ。秋桜君は自分の居場所を見つけて頑張ってる良い子でしょ」
「そういう言い方をすればそうかもしれない」
「楓だって大和が困ってたら助けるよね?」
「……絶対助ける」
「それと一緒だよ」
楓は諦めたように頷いた。
「明日、弟の事よろしく。俺の部下って伝えてるから大分警戒されるかも」
「可愛い未来の弟だから大丈夫。初めて出会った頃の楓に会ってるみたいでドキドキしそう」
二人はかなりソックリだもんね。
「いや、俺は弟よりキツイ雰囲気でしょ」
「自覚あるんだ?」
「まあね。初対面だと話しかけづらいはよく言われる」
「そう?だとしても、魅力の一つ」
中身は凄く優しい人だからな。
「物好きだよね」
「そっちがね」
私達は笑いあってキスをした。
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