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「本社、ですか?」
「はい。家で父の帰りを待つのは性に合いません」
「……」
これ、マズイやつキタ。
トオノの本社まで送れても駐車場停められないし、中には入れない。部下ではない事が即バレる。
「あの、実は私お兄さんの部下じゃないんです」
ならいっそ素直に本当の事を言おう。うだうだするよりマシだ。
「だと思っていました」
「!?」
な、なぜ?
「兄はわざわざ会社の人間を身内の迎えに寄越すような人ではないですから。そんな事をするくらいなら自分で迎えに来ると思います」
「なるほど」
さすが弟。兄の事よく分かってる。
「佐伯さんは兄の友人なんですか?」
「友人というか……お付き合いさせて頂いてます」
「え?お、お付き合い?」
狼狽える秋桜君を横目に私は頷く。
「そう、なんですね……今までのタイプとは全然違うので驚いてます」
「ははは」
褒め言葉として受け取っておく。
「兄の恋人がどうして俺を迎えに来たんです?兄は反対しましたよね?」
「物凄いお節介だけど、力になりたくて。秋桜君の職場に行ったのも楓が様子を気にしてて」
「兄が、ですか?」
「うん。私は一生懸命頑張ってる君の味方になりに来ました。まあ旅は道連れくらいの感覚でお願いします」
「……」
「楓にキツイ事言われたら、私が言い返すから」
「……百人力ですね」
私は笑って秋桜君の肩を軽く叩いた。
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