遠野事変

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「許さなくて良いよ。勝手な事をして申し訳ないとは思うけど間違った事はしてないと思うから」 話すつもりが全くないなら村瀬さんだってここに通さないはず。 「そう」 楓の雰囲気がピリついたものになる。 「兄さん、里津さんは俺に協力してくれただけ」 「そんな事は言われなくても分かってる……里津」 「……はい」 いや、怖い。 「秋桜と話すから席を外してくれる?」 「え」 秋桜君は私を見て頷いた。 私は部外者だから出来るのはここまで、か。 「楓、秋桜君の話きちんと聞いてあげて欲しい」 「……」 「秋桜君、私は車で待ってるから話が終わったら連絡して」 「あ、いえ、お待たせしてしまうと思うので」 「ううん。待ちたいから待ってる」 「でも」 「秋桜、里津は頑固だから甘えた方が良い」 「!」 否定はしない……。 「なら、お願いします」 「待ってるね」 後ろ髪を引かれつつ部屋から出ると。 「こんにちは」 「こ、んにちは?」 何故か村瀬さんがいた。 「良ければお茶でもどうです?」 「いや、私は」 「そう言わずに。どうぞ」 「っ、」 有無を言わせない笑顔にとぼとぼと付いて行った。
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