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一年後。
私はフランス、パリにて楓と一緒に暮らしつつ紹介してもらったカフェで働いていた。
言葉はフランスに来る前楓の物凄いスパルタ教育のおかげで日常会話くらいなら何とか出来ている。
パリの街並みはまるで映画の世界に入り込んだみたいに綺麗で毎日が新鮮だ。
「うわ、このクロックムッシュ最高にうまい!!」
「でしょ~、この後はバーに飲みに行くわよ!ワインと生ハムが最高に美味しいの」
「!へぇー、楽しみ」
新鮮、なのだが。
「あら里津、お腹空いてないの?」
「まだこの状況を飲み込めてない」
今朝、すみれから連絡があって……今日休みよね?大和がパリに来てるから三人で食べ歩きしましょ!と誘われたのだ。
パリに早く馴染めたのはすみれが色々と連れ出してくれたおかげだけど、大和がパリに来るなんて一言も聞いてなかった。
「大和、パリに来るなら連絡しなさいよ」
「ごめんごめん!ビックリさせたくて」
「……まあ、元気そうで良かったけど。というかあんたすみれの家に泊まってるの?」
「うん」
「うん、て。まさか付き合ってる?」
喜ばしい事だけど、それはそれで何だか複雑だ。
「里津!野暮な事は聞くんじゃないわよ。それに私と大和は友達よ。流石にあんたの弟に手は出さないわ」
「そう、なの?」
「でも昨日酔った勢いで頬にキスはされたけど」
「は!?」
キス!?
「キスなんて挨拶じゃないの!いちいち気にする事じゃないわ!」
「そうそう、挨拶」
「……」
そう、なのかなぁ。
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