糖分過多

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それから三十分程また車に揺られていると海岸線が見えてきた。 「わ、海だよ!海!キレー」 天気が良いから海面がキラキラ光っている。 「降りる?少し歩こうか」 「うん!」 海水浴なんて何年もしていないけど海は好きで日本にいた頃はぷらっと見に行く事もあった。 車を停めて砂浜を歩く。 夏だったら裸足になりたい所だ。 「寒いけど、空気が澄んでて気持ち良いな」 「そうだね」 楓はぐっと伸びて私の手を引いた。 私はキョロキョロと辺りを見回す。 「なんか、あれだね。前一緒に観た映画の場所に似てる」 二人の兄弟と犬が冒険する映画。 派手さはないけどホロリとする所もあって良い映画だった。 「うん。同じ場所だから」 「あ、そうなの?」 あえて連れて来てくれたのかな? 「そう。ここは父と母の初デートの場所で父が母にプロポーズした所でもあるんだよね」 「え」 「まだ十代の頃、家族旅行で来たんだけどここから見える景色が綺麗でさ。鮮明に覚えてる」 「そ、そっか」 一瞬プロポーズされるのかと思った。 ビックリした……。 「だから、もし自分に大事な人が出来たらここでプロポーズしようと思ってた」
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