糖分過多

8/9
前へ
/260ページ
次へ
「プロ、ポーズ?」 「そう」 嬉しいのに、いや、嬉しくて頭が真っ白になる。 「この一年、俺の事をずっと支えてくれて本当にありがとう」 「そんなのこちらこそだよ」 誰のせいで太ったと思ってんだ。 「あっという間ですごく楽しくて充実した一年だった」 「……うん」 「佐伯里津さん」 楓は私と向き合って両手を握る。 「俺は貴方と一生、一緒にいたいです。結婚して頂けますか?」 「……」 『大丈夫ですか?』 何故か八年前、傘を差し出してくれた楓と重なる。その時はおずおずと傘を受け取ったけれど今は違う。私はぎゅ、と手を握り返した。 「っはい!私が一生、幸せにします!」 「!」 楓は一瞬驚いた顔をして笑い出す。 そして私の頬に触れた。 「もう十分、幸せにしてもらってる……愛してるよ」 その言葉にじわりと涙が滲む。 楓とならこの先もきっと大丈夫。 私がそっと目を閉じると私達の影はゆっくりと重なった。 【完】 2023/12/18 雪尾泉水
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!

405人が本棚に入れています
本棚に追加