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「プロ、ポーズ?」
「そう」
嬉しいのに、いや、嬉しくて頭が真っ白になる。
「この一年、俺の事をずっと支えてくれて本当にありがとう」
「そんなのこちらこそだよ」
誰のせいで太ったと思ってんだ。
「あっという間ですごく楽しくて充実した一年だった」
「……うん」
「佐伯里津さん」
楓は私と向き合って両手を握る。
「俺は貴方と一生、一緒にいたいです。結婚して頂けますか?」
「……」
『大丈夫ですか?』
何故か八年前、傘を差し出してくれた楓と重なる。その時はおずおずと傘を受け取ったけれど今は違う。私はぎゅ、と手を握り返した。
「っはい!私が一生、幸せにします!」
「!」
楓は一瞬驚いた顔をして笑い出す。
そして私の頬に触れた。
「もう十分、幸せにしてもらってる……愛してるよ」
その言葉にじわりと涙が滲む。
楓とならこの先もきっと大丈夫。
私がそっと目を閉じると私達の影はゆっくりと重なった。
【完】
2023/12/18
雪尾泉水
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