408人が本棚に入れています
本棚に追加
「そういえば佐伯のバー通いは続いてるの?」
「続いてるよ、今日も帰りに寄るつもり」
3ヶ月前、めでたく30歳になったのでずっと憧れていたバーに通い始めた……と言っても今日で3回目だけど。
「やっぱりバーって良い?」
「めちゃくちゃ良い」
お酒も美味しいし、バーテンダーさんも多分40代後半だと思うけど、醸し出す大人の雰囲気とお酒を作る動作が洗練されていてずっと見ていたくなる。
「今度私も行ってみたいな」
「お、いいよいいよ。一緒に行こ」
筒井みたいな美人はバーのカウンターに映えるだろうな。白い肌に綺麗なロングの黒髪、少しキリッとした印象の瞳も正統派美人!って感じで昔から羨ましかった。
そんな事を思っていると閉店したカフェのドアが開く。
「こんばんは、お疲れ様」
「「お疲れ様です」」
入って来たのはカフェのオーナー、矢川直人さん。36歳、独身である。
「閉店後にごめんね。ついさっき北海道から帰って来てさ。2人にお土産」
「わ、ありがとうございます」
「……」
お土産を嬉しそうに受け取る筒井。
筒井は長いこと矢川さんに片思いしている。同期の中では出世街道まっしぐらだと思っていたのに、アッサリ仕事を辞めて矢川さんに付いてくる位だもんな。
気持ちを伝えないの?って聞いても、私なんて相手にしてもらえないよ。の一点張り。
凄く、見ていてモヤッとする。
まあ、ここは気を利かせてさっさと帰るか。
最初のコメントを投稿しよう!