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少し足早に歩くとすぐ目的地に着いた。
ホテルに入れば中央に豪華なシャンデリア、その奥にはレッドカーペットが敷かれた階段が目の前に広がる。
これだけでもう、私には非日常への第一歩。
バーの利用は宿泊客以外も出来るけど初めて来た時は緊張したな……。
エレベーターに乗り、最上階のボタンを押す。店内に入るとカウンター席に案内された。
「こんばんは。先月も来て下さいましたよね」
「えっ、はい。覚えてるんですか?」
「もちろんですよ」
ニコリと微笑まれると、つられて微笑み返す。
バーテンダーさん、40代後半だと思うけれど今でもモテそうな人だよなぁ。
「ご注文、お決まりですか?」
「ミモザとチーズの盛り合わせを下さい」
「かしこまりました」
ミモザはオレンジジュースとスパークリングワインのカクテル。初めてこのお店を訪れた時に最初の一杯を相談したらオススメされたものだ。
甘過ぎなくて飲みやすいし、私の定番の一杯になりそう。
ウキウキした気分でバーテンダーさんの所作を見ていたら2つ先の席に男性が座る。
「三上さん、マティーニお願いします」
三上さん、というのはバーテンダーさんの名前だろう。チラリと横目で男性を見る。
「……え」
男性を見た瞬間、ドクン、と心臓が鳴った。
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