イギリスへ

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イギリスへ

飛行機のなかで、ブランデーを頼むと、一気にあおって爆睡した。 目覚めたとき、なんだかすごく、すっきりした気がしていた。 懐かしい、イギリスの匂い。 ヒースロー空港から、車で一時間。タクシーを拾った。風景が、だんだん田舎に変わってゆく。懐かしい。 茶色の煉瓦造りの、タンブリッジ・ウェルズの大きな街に来たときには、なんだか、生まれ故郷に戻った気がして、僕はひとり、涙した。いま、この街で、綾乃が息をしている……。 ジョンソンズ・タウンの近くの、花屋の前で止めてもらった。 僕は、その店の忘れな草を、全部買った。 花屋のおばさんは笑った。 「忘れてほしくない娘がいるのね?」 「そう、そうなんだ!」 僕は、胸が高鳴った。 十七時。まだ、早い。 僕は、近くの店で、ポテトスープとパンを頼んだ。イギリスで、飯がうまいと思ったのは、初めてだった。こんなに空腹だったと、改めて気づく。 ポテトスープをおかわりした。
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