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森永目線
そう。
確かに彼女は、ひとめでひとを惹きつける、なにか不思議な魅力を持った女の子だった。
初めて僕が教壇に立った瞬間、ああ、これが、職員室でひそかにうわさになっている、ピアノAクラスの美人かとすぐに思い当たった。
ものうげな長いまつげで、目が驚くほどでかい。
白い透き通った肌、筋の通った鼻。
組み出された長い脚は、彼女が、モデル並みに背が高いことを物語っていた。
茶色に染められ、ゆるくウエーブした長い髪。
そして、全身から匂い立つ色香。
でも、そんな魅力が、彼女にとってプラスであってきたのかは、かなり疑問だ。
というのは、そうでなくても、彼女は、なにかと話題に登りやすい境遇に生まれてきたからだ。
彼女は、とある有名政治家の一人娘だった。
たびたびテレビに報道される、その政治家は、必ずしもいい話題に登場するとは限らなかった。
ただ、カリスマ性にあふれた彼女の父親は、いいにつけ、悪いにつけ、人々の興味をそそってやまなかった。
彼女は、名を安河内綾乃といった。
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