透明な鳥

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「なんだかなぁ……」  鳥を飼い始めて数日たった休みの日、寝転がって天井を見ながらつい声が出た。  (結局、鳥を飼ってなんかいいことあったか? なんもない。やっぱ騙されてる? 彼女とも進展ないし……)  そう考えると、なんかイライラしてきた。  (そもそも、鳥なんているのか?)  そう思うと体が勝手に動いた。トリカゴ掴んで風呂場に行く。  (どうせ、僕が買った鳥だ、どうしようと僕の勝手!)  ズボッ!  トリカゴを水の張ったお風呂の中に沈めた。 (これで、鳥がいるかどうかがはっきりわかる!) 「え!」  カゴの中で何かが泳いでいる。泡をまとった水流が激しく動き回る。 「う、うそ!」  慌ててカゴの扉を開けると、バサーンと水しぶきをあげて何かが飛び出る。 「うわっ!」  飛び出したものを避けようとして後ろにのけぞった、その時濡れた床で足を滑らせ、後ろに倒れる。床で後頭部を強打した。  ポトポト…… 天井に止まった鳥からの水滴が顔に落ちるのを感じながら、僕の意識は遠くなった。
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