帰国と再会

1/10
822人が本棚に入れています
本棚に追加
/112ページ

帰国と再会

 「雫せんぱーい、このリスト昨年のまでしか載ってないんですけど、どこに前の分あります?」  くりくり目の澄ちゃんが聞いてくる。  「うーんと、棚になかったとすると地下の書庫かもしれませんねー、はい、残念でしたー」  しかし、澄ちゃんはにっこりと笑いこちらを見た。  「せ・ん・ぱ・い。私、10時から法務部の会議に参加予定だったの忘れてしまいましたか?」  しまった。ホントに忘れておりました。  「……このリスト、誰が欲しいって言ってるの?」  「それ、俺、俺」  「は?オレオレ詐欺か?」  振り向くと同期の時田が笑っている。    「雫、俺も頼まれただけなんだけどさ、部長に。なんだか新しい課長が来るらしく、その人に必要なんだってさ」  営業で日に焼けた浅黒い顔と白い歯が目立つ。その白い歯はコマーシャルかい?とツッコむと、ふざけんなと背中を叩かれた。  私は、総務部所属の入社4年目。この会社で総務の仕事は色々あるが、まあ出張査定や総会担当、庶務事務とりまとめなどを最近は後輩もできたので、頼られながらやっている。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!