1.兄の失踪

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1.兄の失踪

 俺は2卵生双生児だ。    世界には男女以外に、アルファ、ベータ、オメガという第2の性がある。  αは優秀で、社会的地位が高い傾向にあるので、重要な役職に就いている事が多い。  βは人口の約95%以上を占めている一般人だ。  そしてΩ。  男女関係なく妊娠できて、少なからず差別されているし、社会的地位は今も低い。理由は発情期があるからだ。発情期の周期はおよそ3か月に1回だけど、人によって誤差がある。  発情期間中、最悪な事にΩは、αを強烈に惹きつけてしまう。野蛮人のα共はΩを襲ったりするもんだから、余計Ωは脇に追いやられているんだ。  兄はαで弟の俺はΩ。  俺の父親は底辺から這い上がったαの経営者。つまり、バリバリの営業マンでめっちゃ厳しい。  俺と兄はいつも才能を比較されて、俺は大人に囲まれている兄を毎日見ていた。  外見が似ていなかったら、まだ傷つかずにいられたかもしれない。  だけど、俺たちの見た目は酷似していて、才能の違いだけが顕著に表れていた。身長も一誠の方が2㎝高いけど。    兄の『花園(はなぞの) 一誠(いっせい)』はΩの男を妊娠させた挙句、冬休みの帰省中に失踪した。しかも高1で、だ。  「子供を育てるんだ」と、行方知れずになった。    一誠の書き置きには、『俺らを放っておくなら、大事にはしない』その1文だけらしい。  このことが世間に広まれば会社の経営が傾き、信用はがた落ち。  そう考えた俺の父親は、一誠の身代わりを俺にして欲しいそうだ。
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