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私は今、運命の神様に試されているのかもしれない。
だって、だって……とんでもない場面を目撃してしまっている!
「ごめんね……。私、もうシン君とは付き合えない」
昼休みの体育館裏で、そう言ってその美少女は俯いてしまった。
そして、その相手の〝シン君〟は男子バスケ部の林慎二先輩。私の片想い中の先輩だ。
「……だから、どうして? 理由を聞かせろよ」
「ほら、そうやってすぐに怒るでしょ?」
「怒ってないよ。ただ、別れるとか考えたこと無かったから……」
そう、この美少女は林先輩の同級生で付き合って一年くらいになるという彼女さん。
つまり、私は林先輩がフラれる場面に遭遇してしまっているのだ。
いや、もちろん体育館の陰に隠れてこちらの姿は見えない状態ではあるけど。
えっと、平たく言えば家政婦は見た的な状態?
「だからね、シン君のことが時々怖くてなにも言えなくなっちゃうの。威圧されるっていうか……」
彼女さんは深刻そうに訴えているけど、恐らく林先輩には伝わらない。
だって、この人は意外と天然なんだもん。
彼女さんは林先輩の口調が怖いのかもしれないけど、この人は本当に悪意なんてひとつもなくて、ぶっきらぼうな言い方なだけなの。
なんでただの後輩の私が分かっていることを、一番近くで見ている彼女さんが分からないんだろう……?
私はちょっともどかしくなっていた。
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