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「ごめん、そんなつもり無かったんだけど。言い方が悪いなら直すよ」
焦りながら真剣に言葉を放つ林先輩に対して、詰め寄って来る彼に恐怖を感じている彼女さん。
ちがうよ、先輩はただ必死に話しているだけなの。怖がらないで。
彼女さんの目の前に出て、そんなことを言いたくなる。だけど、そんなわけにもいかない。
「今まで自分がどう見えるか知らなかった。けど、沙羅に怖がられていたなんてショックだ。マジで改善するからさ」
一生懸命に言えば言うほど、彼女さんが恐怖を感じているのを先輩は気づかない。
なにこれ、まるでコントじゃない。
「ご、ごめんね。私……無理なの……」
恐怖で泣き出す彼女さんに、先輩もどうしたら良いか分からなくなっている。
キーンコーンカーンコーンーーーーーーーーー
無情にも時間切れを伝えるチャイムが鳴り響く。
「ごめんなさい。もう無理だから」
そのチャイムをきっかけに、彼女さんはそう言い残して走り去ってしまった。
残された林先輩は途方に暮れたように、ただ遠く離れていく彼女のうしろ姿を見つめていた。
「…………マジかよ」
そう呟いた先輩の声がやけに切なくて、私まで泣きそうになってしまった。
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