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<4・セクハラと妄想は紙一重。>
恋愛小説のイロハってなんですの!?とまりんが目を剝いたのは言うまでもない。
――とととととというか、私は小説のスキルを教えて欲しいのであって、恋愛のスキルを教わりに来たわけじゃなくてですね……!?
軽く混乱しているまりんに気付いたのか、勘違いするなよ、と国枝は軽くまりんを睨んでくる。
「俺は貴様に1ミリも興味もない。1ミリも、かんっぜんに1ミリもな」
「何で三回も繰り返したんです?ねえ?」
「ただ、一応褒められたいだけの輩ではなさそうだと見込んで少しばかりアドバイスをしてやろうというだけだ。ありがたく思え」
だから何でそんな偉そうなんだ!とは思うが相手はプロの大作家であるのは間違いなく。こっちが教えを乞う側なのも事実なので、ぐっと堪えるまりんである。
「貴様は恋愛経験もなく、想像力もないものだからまともな恋愛小説が書けないんだ。だから、まず恋愛ってものがどういうものか、貴様の残念な頭でも想像できるようにしてやると言っている」
「いちいち一言多い……」
「何か言ったか?」
「……イエ、何も」
具体的には、と彼はソファーに座り直した。悔しいが、そっくりかえって高級ソファーに座っているだけで、彼は随分サマになっている。公表されている年齢が正しいのなら、国枝は自分と同い年であるはずなのに、妙に大人の色気が漂っているというかなんというか。
イケメンというのはなんともズルいイキモノである。俺様ムーブをされて正直ムカつくのに、ムカついてしまうのに同じだけかっこいいと思ってしまうのだから。それはそれ、まりんも女であるわけで。
「貴様のさっきの小説は、新しく異動してきた上司の高篠に、ヒロインの西島五月が一目惚れをするところから始まる。そうだったな」
「そう、ですけど?」
「それを今から再現する。俺が高篠で、貴様がヒロイン。そのつもりになって、貴様が書いてきた小説の台詞を音読してみろ」
「……?わかりました」
それで、何かわかることがあるのだろうか。まりんが台本替わりに原稿を持って高篠を演じる国枝の前に立つ。そういえば、現在のオトナ向け女性では俺様キャラはそれなりに人気があるので、上司の高篠も結構傍若無人な俺様キャラとして設定したのだった。国枝が演じるとなると、なんというか妙にマッチするというか、わりとそのままであるような気もしてしまう。悔しいがどっちもイケメンなのは間違いないわけで。
「ああ、違う」
台詞を読もうとしたところで、国枝に止められた。
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