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<3・作家志望の素人、いきなりペシャンコになる。>
私はこうこうこういう理由で小説家を志して――ということを語ろうとしたら、あっさり国枝先生にシャットアウトされてしまった。
「そういうのはいい。興味がない」
「なっ」
「貴様は馬鹿なのか?小説家になりたい奴の志望動機なんてみんな似たようなものだろう。仮に感動的な理由があったからといって、それが何だと言うんだ?読者は作者の、作家志望動機に感動して本を買うのか?違うだろう、大事なのはいかに小説が面白いか、それだけだ。それとも何か?お前は“私はこんなに真剣に頑張ってきたので温情を下さい”とでも言うつもりか?」
「ぐぐぐぐぐ……」
正直、図星だった。真剣な志望動機を聞いてもらえれば、自分の作品も真剣に読んでもらえるのではないかと期待してしまったというのは。まりんは諦めて作品を国枝に渡した。国枝は――どうやらかなり速読であったらしい。コピー用紙をめくる速度が速い。速すぎて不安になるほどに。
ただ、目はちゃんと文字を追っているようだし、読み飛ばしているわけではなさそうだった。よくよく考えれば、彼は自分の連載の仕事や執筆作業もあるのだ。人様の作品を速読できないなら、審査員なんて引き受けている余裕などないだろう。
「……なるほど」
しかし、国枝は序盤を読んだところで、ページを捲るのをやめてしまった。え、とまりんは小さく声を上げてしまう。彼がどこまで読んだかわからないが、今回提出した恋愛小説は後半が面白いという自負があったのだ。恐らく彼はそこまで到達していない。なんでそこで読むのをやめてしまうのだろう。
まりんが尋ねようとした、その時だった。
「これは一次で落ちるな」
「んがっ!?」
いきなり爆弾が投下された。いきなりダメージを食らって、まりんは思わず体をのけぞらせる。気分はまな板に投げられたエビだ。
「ななななななななな、何が駄目だったんでございましょうかかかかかかか」
まりんはひっくり返った声で尋ねる。確かに、一次ばっかりで悩んでいる、というのは最初にまりん自身が言ったことだ。しかし、どのコンテストや公募に出して落ちたのかについては話していなかったはずである。
つまり彼が言っているのは、カテエラだから落ちたんだ、ではなくて。
「貴様」
さらに、国枝の追撃。
「処女だろ」
「んごほっ!?」
「それどころか、彼氏いない歴年齢だろう」
「ううううううううるさいですわよっ!ていうか、そんなこと関係あんのっ!?ていうかセクハラ、セクハラだからっ!」
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