もうひとつの再会

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「沖田君?といったな。すまない、トシも本来悪い奴ではないのだが、この通り口の悪い不愛想な男でな。」 沖田という名前が出た瞬間、大きな驚きの声があがる。だが、そんなことを気にも留めていないように、総は首を左右に振った。 「改めて沖田君、私からも是非お願いしたい。やはり、難しいだろうか?」 新選組局長直々のお願い。過去に最も尊敬し、本当の家族のように慕っていた人からのお願い。総の意志が揺らがないはずはなかった。 「もし君が、そちらのお嬢さんと離れたくないと言うのならば、ここで一緒に住んでもらっても構わない。出来る限り君の希望を聞き入れるとしよう。」 信じられないことだった。だが、彼らがここまで躍起になるほどの実力を総が持っているとするならば、それは本当に凄いことだと思った。やはり彼は、令和の沖田総司なのだ。 「…少し、考える時間をいただけますか?」 その言葉に、近藤さんは嬉しそうに笑った。見る者を明るくする、太陽のような眩しい笑顔だ。 「明日花、ごめん。」 部屋に戻って開口一番、総は謝罪の言葉を口にした。 「ううん、謝らないで。総は本当はどうしたいの?」 彼は何も答えない。本当に迷っているようだった。 「私は、総がしたいようにして欲しい。」 「でもそれは、あなたの身を危険に晒すことになる。」 苦悶に歪む表情。何て優しい人なのだろう。私がいなければ、彼はすぐに入隊したはず。だって、入隊すれば、またあの近藤さんについて行くことができるのだから。今度は過去とは違う健康な身体で。それならば私は… 「過去に叶わなかった夢が、叶うかもしれないよ?」 「夢?」 「健康な身体で、最後まで近藤さんについて行くという夢。」 総の目が大きく見開かれる。私はギュッと彼の両手を包み込んだ。 「私は大丈夫。だって、幕末生活は二度目だもん。」 明るい表情でおどけてみせると、ようやく彼の笑顔を見ることができてホッとする。 「だけど…」 総は言いにくそうに言葉を詰まらせた。私は首を傾げる。 「心配なんだ。」 「心配?」 「あなたが、もう一人の私に取られてしまわれないかと。」 今度は、私が目を見開く番だった。 「沖田総司は、もう、あなたを想っている。私がいたって、彼の恋心を止められるはずがない。だって、彼があなたに惹かれるのは必然なのだから。」 「言ったでしょう?私には、総だけだって。」 「明日花…」 「確かにまだ困惑しているし、沖田さんを初対面の赤の他人だと思うのは正直難しい。だけど、今の私は総が一番。だから、私のことよりも自分の気持ちを大切にして。私はそれにどこまでもついて行くだけだから。」 真っ直ぐに彼を見つめて、きっぱりとそう言い切ると、両手を引かれた。総の胸に飛び込む。 「ありがとう。」 「うん。」 「今度こそ、新選組の、近藤さん達の最後を見届ける。そして、絶対にあなたも幸せにするんだ。」 こうして、総の新選組への入隊が決まった。
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