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「じゃあさ、これからコンビニに寄って何か適当に買い物して、家に帰ろっか。今はお腹がいっぱいでも、夜にお腹空くかもしれないし」
あえて特訓のことには触れずにコンビニに寄って帰ることだけを伝えると、真悠子の態度が急によそよそしいものへと変化した。
「そうですね」と答えたあと、俺の方には全く視線を向けず、かしこまったように前を向いている。
急にどうしたんだろう?
運転しながらなんとなく助手席の様子を窺ってみるけれど、さっきまで楽しく会話をしていたのに、今はそんな気配が一切ない。
何かまずいことでも言ったか?
家に帰ると伝えたことで、まさか特訓の意味に気づいてしまったのだろうか?
それで嫌がられてしまった……とか?
今さら特訓の話題を出して、あれは冗談だから気にするなとも言いづらい。
結局真悠子はコンビニに到着するまでひと言も話さず、しきりに何か考えているようだった。
だが──。
このとき真悠子の頭の中でとんでもない妄想が繰り広げられていたとは俺はまだ知る由もなく、それがわかるのはこのあとのベッドの上での話だ。
コンビニで買い物を終え、俺の家へと到着したのは17時半近くになっていた。
「こっちのソファーにでも適当に座って。あっ、その前に先に手を洗うよな。キッチンでも洗面所でもどっちでもいいよ。両方ハンドソープあるし」
真悠子を案内しながら口数が多くなっている自分に笑ってしまう。数年前まで実家で暮らしていたこともあり、初めて自分の部屋に女性を入れたことで緊張しているのだろう。
俺は真悠子が手を洗っている間にコンビニで買ってきたものを冷蔵庫の中へ入れると、スーツを脱いでスウェットに着替え、ソファーに座っている真悠子の隣へ腰を下ろした。
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