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今回の雑誌の特集は、『推しがいる生活』だと、先程、涼雅のマネージャーさんから聞いた。
今日は、そのテーマに沿った写真を何枚か撮影するとのことだ。
俺は安藤さんの指示を待った。
「翔ちゃん、緊張してる?」
「うん、かなり。」
「大丈夫。俺がフォローする。」
「ありがとう。」
なんて格好いいんだ。と、口に出そうになった言葉を俺は無理やり飲み込んだ。
「翔太くん、涼雅を後ろから抱き締めてみて?」
なんだって!?
冷静になれ。これは、推しから頼まれた仕事だ。
やり通さなくては俺は自分を許せない。
俺は指示通り、涼雅を抱き締めた。
「うん、いい感じ。涼雅は、翔太くんの腕に触れてみて。ん、いい感じ。」
カメラのシャッター音が何度も鳴り響く。
「次は、翔太くん、立膝ついてみて。」
「はい。」
俺は言われるがまま、ポーズをとった。
「いいね。雰囲気ある。涼雅は翔太くんを見下ろす感じで。」
涼雅の視線が俺の視線とぶつかる。
なんて、尊いんだ。
これぞ推しだと言わんばかりに、俺は涼雅を見つめた。
「はい、おっけー。2人ともお疲れ様。」
ふぅ。終わった。
一気に肩の力が抜けた。
「翔ちゃん、お疲れ様。本当にありがとう。」
「ううん。涼雅の役に立てて良かった。」
俺は時計を見た。
「ヤバっ、大学行かないと。」
「間に合いそう?」
「うん、車で来てるからこのまま行けば間に合う。」
「そっか。良かった。」
涼雅は安堵の表情を浮かべた。
「そうだ、今夜、何食べたいかラインしておいて。夕飯作って待ってる。」
「うん。ありがとう!また夜にね。」
「仕事頑張れよ。」
俺は、安藤さんに挨拶を済ませ、涼雅に見送られながら急いで大学へと向かった。
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