推しが弟になりました。

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「ご馳走様でした。今日も美味しかった。」 涼雅は夕飯を食べ終わると、食器をシンクまで運んだ。 「洗い物は俺がするよ。翔ちゃんは休んでて?」 「でも、涼雅も撮影で疲れてるだろ?」 「俺なら大丈夫。あ、待ってる間に台本読んでる?練習付き合ってほしいから。」 涼雅は鞄から台本を取り出し、俺に手渡した。 涼雅は、4月に放送予定の深夜の2夜連続ドラマの主演に抜擢された。 撮影は来週から始まるとの事だが、今はドラマ関連の取材などの仕事で、毎日忙しくしていた。 「翔ちゃんは、俺が演じる楓が想いを寄せる同級生役ね。ちなみに、高校三年生だから。」 「ってことは、ボーイズラブっていうやつ?」 「そうそう。BLドラマ。」 早速、俺は台本を開いた。 練習とは言え、推しからの頼み事となれば、手を抜くわけにはいかない。 俺は、台詞を暗記する勢いで何度も読み返した。 俺は今から、楓の同級生で、クールでミステリアスな咲人になる。 「翔ちゃん、真剣だ。格好いいなぁ」 「なんか言ったか?」 「ううん、なんでもない。」 「よし、覚えた!」 「いつも思うけど、翔ちゃんって記憶力いいよね。」 「唯一の特技だからね。」 洗い物を終えた涼雅が、リビングへ戻ってきた。 「早速、よろしくお願いします。」 「お手柔らかに。」 「翔ちゃんこそ。笑」 目の前で、推しの演技を堪能できるという贅沢な時間。 俺は幸せを噛み締めた。
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