107 カラフルなモエナの疑問

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107 カラフルなモエナの疑問

着替えたママが戻ってきて、冷蔵庫からジュースを出してグラスに注いでた。それを見てモエナが、 「ママ、私にもちょうだい」 ってキッチンへ向かう。 ホーも急いでキッチンへ向かっているけど、そんなに慌てると腰に悪いわよ……。 ただでさえ腰が弱いのよ、私たちダックスって。 そのままモエナはサイニングテーブルに座ってママからジュース貰ってる。 それは貰えないのよね…。 ホーは飛び跳ねてモエナにおねだりしてるけど、私は貰えないのわかってるから動かない。 ホーより少し賢いのよ。 少し年上だしね。 「ママさ、デジタルタトゥって知ってる」 モエナはジュース飲みながらママに訊いてる。 「デジタルタトゥ……」 ママはテーブルの上に置いてた携帯電話を手に取って調べてる。 携帯って便利なのね。 何でも調べる事出来るみたいだし、電話も出来るし、写真も撮れる。 私たちも使えたら便利なんだけどね。 私たちの言葉を人間の言葉に変換する機能なんて何処かにあるのかな……。 だったらお腹空いた事伝えられるから、お腹グウグウ鳴らさなくても良いのにね。 「デジタルタトゥね…。それがどうかしたの」 ママもジュース飲みながら椅子に座る。 「うん、クラスの子がさ、何かそれっぽい写真をネットに載せられてね…」 モエナはテーブルの上にママが置いたお菓子の袋を手に取った。 「これ食べて良い」 一応訊くのよね。 ママが怒ると怖いしね。 「はあ……。あんたら中学生よね。そんな事になってんの、今の中学生って」 「何か、別れた彼氏に裸の写真を載せられたみたいでさ、今日、学校で大騒ぎになってた」 モエナがお菓子を口に入れて喋ってるけど、何言ってるかわかんないわ。 「ちょっと、それって大丈夫なの……」 「大丈夫か、大丈夫じゃないかって言われると大丈夫じゃないと思うけどさ、それって別れた彼氏が悪いよね」 ママもモエナと一緒にお菓子食べ始める。 「そんなの、写真撮らせた女の子も悪いわよ。そんなのネットに残らなくても、何処かに残るのよ。その彼氏の携帯の中とかさ、その内何処かに出回る事は少し考えればわかるでしょ……」 私もお菓子欲しいかも…。 私はホーと違ってゆっくりとキッチンへ歩く。 腰に悪いしね。 「そうなんだけどさ……。他の子にも訊いたんだけどさ、好き同士で付き合ってる彼氏に写真欲しいって言われたら断れない空気あるじゃん…」 モエナはまたお菓子を口に入れて言うんだけど、本当にそれってママには伝わってるのかな。 「あ、私はしてないよ。そんな事、だけど、結構、裸の写真とか彼氏に送ってる子いるんだよね…」 何か、ママの表情が曇ってるわ。 やっぱりこの年頃の女の子がいると心配なのね…。 ママは身を乗り出す様にして、 「ねぇ、モエナ…。あんた本当に大丈夫なの。もちろん、それはワカナにも言える事だけど、そんな事したら一生ネットの何処かに残っちゃうからね。それがデジタルタトゥでしょ」 「わかってるよ。私はしてないわよ。お姉ちゃんは知らないけどさ」 ママはジュースを飲み干してグラスをシンクに置いた。 「モエナを信じるけど、そんな事したら本当に一生が滅茶苦茶になる事もあるから、ちゃんとしなさいよ」 ママはそう言うと背を向けて、買って来た夕飯の食材を切り始めた。 「わかってるって……。そんな馬鹿じゃないし」 モエナもそう言うと立ち上がって、ジュースを飲み干した。 結局、私たちは何も貰えずに空振り。 まあ、さっきオヤツ貰ったから良いか…。 「じゃあ着替えて来るわ…」 モエナはそう言いながら二階に上がって行った。
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