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5
ヤタツは翌朝、集まった仲間にまず少女から貰った酒を振舞った。
レンとアレジもそこそこ飲んだが、ギザはもうご機嫌でぐびぐびと喉を鳴らして甘い酒を味った。
「美味いなぁ、こりゃあ上等だ」
「米の酒も麦の酒もうまいが、この酒は舶来品ではないか?」
「陽にかざすと見たこともない淡い茜の色になる」
三頭が酒瓶を回してそれぞれの分け前分を飲んでしまってから、ヤタツは昨夜の娘の話を聞かせた。
「それは気の毒な話だ」
とまずレンが同情した。
「娘はなぜ逃げないのだ。獲物が獲れないからか?」
とアレジは赤い顔をさらに紅潮させて言った。
「娘の相手を丸呑みにしてしまえばいい、そうすれば思い悩む必要もなくなる」
ふだん、温厚なギザはすっかり目が座って物騒なことを言い出す。
「人を襲えば山狩りだ。森に住む仲間がみんな炙り出されて殺されちまう」
ヤタツは慌ててギザを止めた。
「人には人の掟があるんだろう」
とアレジは冷静だ。
「哀れだがどうしてやりようもない」
とレンも同意する。
「やっぱり丸呑みに……」
「ギザは黙ってろ」
ヤタツは一同を見回した。
「それよりオレに考えがある」
ヤタツは婆様から聞いた昔話を思い出した。
「ちょっと準備がいるが、お前ら力を貸してくれるな?」
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