殺し屋の恋模奇譚

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荷物を持ったまま回し蹴りをすれば男の手に当たりナイフを落とし、それを拾おうとしゃがんだ男に警察官が体当たりをして倒し後ろ手に手錠にかけていた。 焦げ茶の髪に赤みを帯びた茶の瞳のこちらも中々に若そうな青年で、活発そうな印象を受ける。その隣を通り過ぎようとすれば警察官に声をかけられた。 「怪我は無いか!?」 「・・・。」 「え?あ、いや、ないなら良いんだ」 見下ろしていれば警察官はナイフを袋へしまってポケットにしまってから起き上がって、立ち上がり男も立たせて連行してゆく。 「テメェのツラ覚えたからな!出てきたら真っ先にブッ殺す!!」 「楽しみにしておく」 俺が口元を歪めながら目を細めて言えば威勢の良かった男は何かを察したのか、顔が青ざめてゆき黙ってしまった。 警察官は俺を見て目を見開いていて、視線をそちらへ向ければハッとしたように男を連れて行く。男は俯いて何かを呟き始めていて、警察官は首を傾げていたが俺には聞こえた。 『殺される殺される殺される殺される』 人を殺しておいて殺されるのを恐るなんて変だ。追い詰められたネズミは何をするか分からないのに。 歩いてその場を去り、BARへと帰れば御主人様と見知らぬ男がカウンターで隣合って座って何かを話していた。まだ開店前だし、たぶん仕事の依頼だろう。
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