殺し屋の恋模奇譚

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夜の街の屋根の上を駆ける。目元に赤いラインを引いて狐面を付けていて、濡れ狐として標的の元へと向かっていた。 お偉い人のようで、遊んでばかりの次男を掃除するよう頼まれた。兄と違い女に酒に薬三昧で、このままだと自分の地位が危ぶまれるとの事らしい。 目的地にたどり着けばそこは大人のホテルで、空気中の匂いを嗅いで、あの男と近い匂いのする部屋まで飛び降りて窓枠の上に指をかけて止まり窓を蹴り破り中へと入る。 「キャーーー!!」 「な、なんだよテメェ!!」 案の定男女共裸で正常位で繋がっていた。男は何かを察したようで、女から抜いて服を拾って着る間も惜しんで逃げた。女は呆然と見ていたが俺は女に目もくれず男を追う。 金髪にチャラチャラとしたアクセサリーも付けていてタトゥーも入れているようで、注射痕も幾つか見られた。 この男で間違いないと確信し、一気に距離を詰めて足をかけて倒し懐から麻酔薬入の注射器を取り出し首に打つ。必死にもがいていたが眠りに落ちたその男を担いで元の部屋へと戻れば女は逃げた後でもう居なかった。 壁を登り屋上へ上がってから、また屋根伝いに駆け抜けて倉庫街の使われていない倉庫の扉を開けて中へと連れ込む。 月明かりしかない倉庫内はガランと広く、その中央にとりあえず寝かしておいて廃材置き場から木製の背もたれ付きの椅子と縄、それに短めの鉄パイプと古びた布を拾って男の元へ戻った。
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