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 謎の死を遂げた伯爵の目は、元通りになっていた。私さえも幻覚を見たというのだろうか。その後、私はシャルロッテを献身的に支え、ついに妻とすることができた。望み通り、シャルロッテにも館にも光が戻った。しかし最近、気がかりなことがあった。目のかゆみを覚えた際に、白目の縁に小さなしこりを見つけたのだ。脳裏に伯爵の姿がよぎったが、まさかそんなはずはなかった。しかし薬の事をすっかり忘れていたことに気が付いた。 「そういえばシャルロッテ。薬はどうしたんだい?」  食後の酒興の際、私はシャルロッテに問いかけてみた。 「薬? なんのお薬?」 「ほら。私が南蛮から取り寄せた薬があったろ? 茶色い薬瓶に入った」 「ああ。あれならとっく使い切ってしまいましたわ」 「そうか」 「でも安心してください。私が作っておりますから。あなたにも元気でいてもらいたいもの」 「え!?」  聞けば薬があまりにも効いていたので、南蛮より作り方と蛙を取り寄せたという。 「今もか?」 「はい。あなたのお食事に使っておりました。病気などして欲しくありませんから」 「お前は、なんてことを!」  私は激昂して立ち上がった。なんということだ。私は知らぬうちにフロッシュペルレを摂取していたのだ。  椅子が大きな音を立てて倒れ、私を見るシャルロッテの顔が恐怖でゆがんだ。その姿は、あの時に似ていた。伯爵の最後の日。
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