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えーちゃんと見間違えた低い声は、一太くん。
ちょっとぶっきらぼうで言葉が怖いけど、面倒見がいいお兄ちゃんだった。『むずむず病』でみんないなくなって不安な僕を、不器用なりに励ましてくれる。
「ま、なんだ。知らない方が幸せなんじゃねーか?」
「一太くんは?むずむずしないの?」
「んー、確かにちょっとむずっとくるけど、旅立ちたいとかはねぇなあ」
そんな一太くんは伸び盛りだったみたいで、グングンと大きくなっていった。
「一太くん、すごいね!」
「そうか?」
「なんか逞しくなったお兄ちゃんって感じ!」
「よせやい。照れんだろっ」
そしてそれは、一太くんだけじゃなくて。いなくなったみんなと入れ替わるかのように、僕には新しい仲間が増えたんだ。子供なのは、僕といっちゃんだけ。
あとはみんなお兄ちゃん、お姉ちゃん。
だけどみんなが優しいから。淋しかった気持ちは、いつの間にか消えていた。
そんなある日。
いっちゃんが怪我をした。
大きな怪我で、とても見ていられなかった。
「いっちゃん……いっちゃんっっ」
見守るしか出来ない僕らは、何故だか強い衝撃の後、意識を失って。
目覚めた時には、いっちゃんは居なかった。
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