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 長命種たちは成人すると、そこからは成長も老化もしなくなる。何年経とうと同じ姿のまま生き続ける彼らは、地球人の中に長くとどまれば、嫌でも彼らの不審の目を招いてしまうのだ。  だから長命種たちは遺物を使って地球人の目をごまかし、自らの正体を地球人たちから隠して暮らしている。そうした遺物は、彼ら長命種が地球で生きるうえで、欠かせないものだった。  毅にしても、できることは遺物を構成するパーツの調整や部品の交換が精いっぱいだ。  それでも、どんな技術を用いて作られたのかすらわからなくなった遺物の内部構造に触れ、その機能を回復させることができる者など、彼のほかにはいない。  さらに、狩猟の腕も秀でていた彼は、集落の食料と安全を確保するために欠かせない人材だったのだ。  それに、行く当てのない女性を匿った毅の人道的な行為を責めることは間違いだということ、さらに女性自身が自分たちと同じように、この集落から出ることなく暮らせば、この場所が地球人たちに知られることはないと2人は訴え、毅たちが集落で暮らせるよう、計らおうとしたのだ。  照之と翔の両親、特に父親は、毅と共に当時から故郷の星の探索を進めており、長命種たちの生活に有用な知識を、数多くもたらしていた。さらに、若い頃に集落を1度出て医学を学び、それを集落の人々のために役立ててきたこともあって、人々から一目置かれる存在だったのだ。  ちょっとした怪我ならすぐに治ってしまううえ、地球人がかかる病にはほぼかからない長命種とはいえ、怪我の程度が重ければ治療を必要としたり、死亡する場合も皆無ではない。しかも彼らには、自分たち以外に頼れる存在がいない。そんな彼らにとって唯一、医療という恩恵をもたらしてくれる彼の言葉は、とても無下にできるものではなかった。  それでもなかなか、長命種たちは首を縦に振らなかった。  照之と翔の両親は、来る日も来る日も、人々を根気強く説得して回った。  またその間、毅と女性自身も、集落に溶け込めるよう、努力を続けていた。  そしてその甲斐あって、彼らに賛同してくれる人が少しずつ増え始め、女性が集落に迷いこんでから1年以上が経ったころ、ようやく集落の人々全てが、女性を受け入れることに同意した。  それからほどなくして、毅と彼女は結婚することとなったのだ。
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